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シンガポールストーリー8

<告白>



それはあまりにも突然だった。


私は一時帰国し田舎に帰っていた。
2週間の休み。その間に健康診断があった。
そこで言われたことは今でも忘れていない。
「すぐ入院です。」
救いは、自然気胸という大した病気ではなかったこと。
ただ、この一ヶ月の入院は私の人生を大きく変えた。


沙里は当然見舞いに来てくれた。
「何千キロの遠距離恋愛が何百キロに短くなった!」
と、嘘か本当か喜びながら。
私はうれしかった。しかし、実を言うと、これは沙里に対してだけではなかった。
入院して初めてわかったことだが、「見舞い」は本当にうれしい。
会ったとき異常に疲れるのはまいったが。


深堀も来てくれた。
「沙里さん、一度紹介してくれよ」
と言いながら。
しかし、残念ながら、なぜかすれ違いだった。


病院の生活は楽しくはないが、ひさしぶりの長期休暇にはなった。
そういえば、入社以来、休暇らしい休暇を取ったことがなかった。
高度経済成長期はとうに過ぎ、バブルも日本では崩壊間際だった。
そんな中、世間の休暇が多くなったとは言え、私のようなある意味エリートには休暇なんて無縁だった。
いい休暇にはなった。しかし、逆に、
(このまま路線を踏み外すのではないか?)
という不安は付きまとった。
そんな中の沙里の見舞い。
心身ともにありがたく、心底から愛され、また愛している気がした。


長いようで短い入院だった。
そして、あと数日で退院というとき、それは起こった。
いや、起こったのではなく、私が決心した。
もしかしたら、入院という、いい長期休暇が私に決断させてくれたのかもしれない。
最初はその病院に屋上があるなんて知らなかった。
その屋上で私は告白することにした。
それは湖の見える素敵な場所だった。
日本でも有数の水質の悪い湖だったが、ここからはそんなことは全く感じられなかった。
水面に見える小さな小さな波。本当に穏やかな日だった。
しかし、それは沙里にとっては忘れられないものだったろう。
私は沙里に
「告白したいことがあるんだ。」
と、切り出した。