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シンガポールストーリー1

ブロ友さんに言われて、
むかーし書いたショートストーリーを載せます。
下手で大変恥ずかしいのですが・・
では。



<ドラマのような出会い>
199*年春。私はシンガポールチャンギ空港に降り立った。
当時からチャンギは、東南アジア最大の空港である。しかし、


う・・・・何だ?この臭い・・・だ、だからアジアは嫌いなんだ・・


私はある地方銀行に勤める30歳。
と言っても勤務地はその地方銀行の本店がある「地方」では無く東京。
採用時から海外を約束されたエリートで、まずは(と言ってももう30になってしまったが)、
海外事業部がある東京勤務だったわけである。
しかし、まさかこの「私」の赴任地がアジアとは。
数千人いる行員の中でたぶん英語力抜群。
その「私」がなぜ「こんなに待たされた」挙句、赴任地が「欧米」ではなく「アジア」なんだ。*1
はっきり言って、軽い失望感を覚える赴任ではあった。


と、そんなことを考えているうちに税関に。
「そんなこと言っても、開けれないものは開けれない!」
前方で税関職員に叫んでいる日本人女性がいる。
いつもなら無視する私だが、気になった。
「だから開けたらちゃんと元通りにしてくれるんですか!」
「何疑ってるんですか!」
ブロークンな英語でまくしたてている。
しばらくその様子を他の野次馬とともに観察したあと、
私はいつの間にか彼女に近づいていた。そして、
「どうされました?」
と聞いている。
こういう時、下心が無い男なんているだろうか?
ドラマではよくあるパターンだが私はそう思わない。
ここで、


このトラブルを解決
   ↓
彼女は私に感謝
   ↓
お互いの連絡先を交換*2
  ↓
欧米ではなくて不満は残るが、それでも夢のあるシンガポール生活が始まる


と思いつつ、彼女の返答を待った。
彼女は、どうみても土産だと思われるパッケージを指し、
「この中味見せろ!って言うんですよ」
私はおもむろに税関職員に説明し始めた。
数分後、
私は彼女に、
「開けなくていいそうですよ。」
と言っていた。
下心はあったが、いや、あったからこそ、
お礼を言う彼女を置いて去ろうとすると、
案の定、彼女は走り寄り、
「ありがとうございます。」
私は、「極力」、素っ気無く、
「いえいえ」
だけ言い、歩き出した。
と、これも「案の定」、彼女は近づき、
「あのーーーーー」
「何と説明を?」
私は、
「いえ、たいした事は・・」
本当にたいした事を言ったわけではない。だから、それを説明したくはなかった。
それに、秘密めかした方がおもしろいではないか。
彼女は少し沈黙した末、名刺を出してきた。
「私、いなださりと言います。」
名刺には、ある証券会社の保健師の肩書きが付いていた。
稲田沙里。何とは無しにその名刺を眺めていると、
「あの、あなたは?」
はっと気づき、
「今日ここに赴任なんです。だから名刺は。」
「あ!あとで連絡します。名前は、たなしひろしと言います。」
そこに、
「田無さーん!」
と言う声が聞こえた。
そうだ、現地の人が迎えに来てるんだった。
私は急いで彼女にいつ日本に帰るのかを聞き、日本に連絡することを約束した。


*1 1990年代はやっとアジアが見直され始めてきた時代
*2 このころはまだまだ携帯などという便利なものは少なかった